また、建築業界で大規模な建築基準法への不適合な設計施工が明るみになりました。
一設計者として感じたことを書いてみようと思います。
今度は大和ハウスで不適合建築物。
レオパレスに続いて、今度は大和ハウスで建築基準法その他関係法令に不適合となる建築物が2,000棟以上見つかったようです。

リンク先より引用します。
大和ハウス工業は12日、同社が建設した戸建て住宅と集合住宅の計2078棟が、耐火安全性や基礎の仕様で建築基準を満たしていなかったと発表した。すぐに退去が必要なケースはないとしているが、一部の住宅については速やかに改修工事をするという。
大和ハウス、2千棟で建築基準満たさず 耐火安全性など|朝日新聞
記事では、「すぐに退去が必要なケースはないとしているが、順次、改修工事を進めることにしている。」となっていますが、昨日(4/12)に第一報が出たところであり、レオパレスの件を考えると正直この問題がどこまで尾を引くか、想像もつきません。。
不適合の概要
今回の不適合について、ダイワハウスは詳細な資料をプレスリリースとして掲載しています。
[PDF] 戸建住宅・賃貸共同住宅における建築基準に関する不適合等について
ざっくりと、どういう不適合・不備であったのか、資料を見ていきたいと思います。
詳細については、上記リンク先をご確認ください。
不適合建築物の建設時期、地域、規模
今回、不適合建築物と申告のあった建築物の概要です。実は、今回2種類の不適合が申告されており、以下は、その二つを合わせた概要になります。
- 不適合建築物の建設時期:2000年10月5日~2013年2月28日
- 不適合建築物の 地域:東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県・茨城県・群馬県、他、合わせて29 都府県
- 戸建住宅888 棟、賃貸共同住宅1190 棟(計2078棟)
規模的には、レオパレス並みと言ってよさそうですね。
不適合、不備の内容
不適合の内容としては、
- 防火安全性が不十分な恐れ及び柱の仕様の不適合(賃貸共同住宅200 棟)
- 防火安全性が不十分な恐れ(73 棟)
- 柱の仕様の不適合(188棟)
- 独立基礎の仕様の不適合(合計棟数1,878 棟:戸建住宅888 棟、賃貸共同住宅990 棟)
- 表層改良地盤 での独立基礎の仕様の不適合(戸建住宅731 棟、賃貸共同住宅845 棟)
- 凍結深度 が設定された地域での独立基礎の仕様の不適合(戸建住宅13 棟、賃貸共同住宅33 棟)
- 敷地内に高低差がある敷地での独立基礎の仕様の不適合(戸建住宅144 棟、賃貸共同住宅112 棟)
という大きく2種類、細かく分けて5種類の「不備」が報告されています。
建築基準法不適合、不備への大和ハウスの対応
対応として、以下のことを予定しているようです。
プレスリリースを読んだうえで筆者の理解でざっくりまとめました。。
【表1】
不備、不適合内容 | 法的解釈、対応内容 |
①防火安全性が不十分な恐れ (共同住宅73 棟) | 建築基準法等に違反の恐れ。 19年4月中を目処で改修工事。 |
②柱の仕様の不適合 (188棟) | (調査中ではあるが、) 型式適合認定外だったが、建築基準法の範囲内。 建築主事、 オーナー、入居者等に説明。 |
③表層改良地盤 での独立基礎の仕様の不適合 (戸建住宅731 棟、賃貸共同住宅845 棟) | (調査中ではあるが、) 型式適合認定外だったが、建築基準法の範囲内 。 建築主事、オーナー、入居者等に説明。 |
④凍結深度 が設定された地域での独立基礎の仕様の不適合 (戸建住宅13 棟、賃貸共同住宅33 棟) | (調査中ではあるが、) 型式適合認定外だったが、建築基準法の範囲内 。 建築主事、 オーナー、入居者等に説明。 |
⑤敷地内に高低差がある敷地での独立基礎の仕様の不適合 (戸建住宅144 棟、賃貸共同住宅112 棟) | (調査中ではあるが、) 型式適合認定外だったが、 建築基準法の範囲内 。 建築主事、 オーナー、入居者等に説明。 |
ざっくりまとめると、以上のような対応になると言えそうです。
取り急ぎの改修工事は2,078棟中、共同住宅の73棟のみ??
プレスリリースを読むと、とりあえず、2,078棟に問題があったが、取り急ぎの改修工事は共同住宅の73棟のみ、という事のようです。
これはどいう事でしょうか?
まず、建築の設計や施工で不具合があった場合、その後の対処が大きく変わってくることとして、大きく以下の二つに分けられると思います。
- 性能上問題がある場合
- 手続き上問題がある場合
「性能上の問題」とは、申請図面とも違い、また法律上の求める性能も満たせてないような状態で、完全にアウトなので即、是正工事を行って直す必要がある問題と言えると思います。最近でいうとレオパレスなどは完全にこれになるかと思います。
「手続き上の問題」とは法規等に照らし合わせて性能上は問題ないとしても、必要な手続きができておらず、書類上不適合になっている状態と言えると思います。
この場合、厳密にいえば、手続きをせずに、または手続きと違う内容で物ができているので、壊して作り直すという事になりますが、現実的には性能的に問題ないので、まず手続きをしてください、という指導内容になることも、現実的な対応としてありうるかと思います。ただ、これも実際はアウトなので、通常は設計者も施工者も法律で定められた期間の範囲で申請を行えるよう全力を挙げます。
申請の中には、申請を出さずに工事を行うことで罰則が発生するものもあるので、申請を出し、その通りに施工することは鉄則になります。

今回の大和ハウスの件だと、ダイワハウスは、
表1内の①(73棟)は性能上の問題なので直します。
表1内の②~⑤(残りの2,003棟)は手続き上の問題はあったが、性能上問題なさそうなのでとりあえず報告だけします。
という感じのようですね。
これが、筆者の個人的解釈になりますが、取り急ぎの改修工事が2,078棟中、共同住宅の73棟のみである理由になるのかと思います。
残る2,073棟は、建築主事の判断になる。
では、残る2,073棟についてはどうなるかですが、これに関しては、まずは各特定行政庁の建築主事判断になると思います。
今後弊社は、型式適合認定を受けた仕様と異なる独立基礎の施工を行ったことについて、本日(4
戸建住宅・賃貸共同住宅における建築基準に関する不適合等について|大和ハウス工業株式会社
月12 日)より、特定行政庁の建築主事に対して当該内容をご報告させて頂くとともに、当該物件
を所有されているオーナー様ならびにご入居者様に対しても個別にご説明申し上げ、オーナー様の
ご意向を踏まえて必要な対応を行います。
おそらく、問題が多くの都府県に渡っていることから、各建築主事としても個別に判断しづらいと思われますので、一度国土交通省に問題を上げて、そこで統一した対応を検討することになるのではないかと思われます。(筆者の個人的予想です。)
もしこれが不問となるなら、型式適合認定の意味はあるのか?

今回、ダイワハウスとしては、表内②~⑤の不備について、型式適合認定外の設計を型式適合認定として申請を簡略化して通しており、その範囲としては不適合ですが、仮に一般的な確認申請をしていたなら問題ない仕様なので、是正無しでいいでしょ?という思惑が若干見える気がするのですが、
個人的には、型式適合認定で申請を通したのであれば個別の物件もその通りに設計・施工する必要があると思いますし、仮に一般的な確認申請には合致しているとするならば、確認申請を再度出しなおす必要がありそうというところと、申請を出さずに建築をした場合の罰則規定についてはどうなるのか、というところ、申請を出しなおす場合、その間入居者は建物を使用できるのか、というところが気になります。
いずれにしても、レオパレスに続いてダイワハウスでも、型式適合認定に関わる問題が起こっている中で、国土交通省、建築主事が今回の報告に対してどのように対処するか注目していきたいと思います。
その対応によっては、型式適合認定の制度自体の有効性(または法改正の是非)が問われことにもなりそうだと、個人的には思っています。
コメント
「思います」などの曖昧な表現は止めた方がいいかと考えます。
私は、仕事では一切使いません。
それにしても大和ハウスの不適合に対する対応の悪さには、うんざりしています。
本内容は、大和寄りの記載が多い感がありますが、会社全体としてのレベルの低さを痛感しています。
コメントありがとうございます。
あいまいな表現、、、確かにそうだったかもしれません。
以後気を付けます。
大和寄りというご指摘、、割と客観的に書いてみたつもりでしたが、こちらも参考にさせてもらいます。(ちなみに私は建築業界の者ですが、大和ハウスとは関わりがありません。ので大和寄りに書いたつもりはありませんでした。)
先日さらなる追加発表が大和ハウスよりありましたので、続編記事を公開予定です。
大変理解しやすい。何処の大手住宅メーカーにも国交省の元官僚(OB)が役員、社外取締役、顧問で雇用されていますよね、又第三者機関にも大手ハウスメーカーの資本若しくは出向社員、役員が居られるやに聞き及びます。私もある件で住宅評価会社に検査は可能かお聞きした所・・・
の返答でした。ましてマスコミも広告宣伝費を頂いている以上下手な報道は不可ですよね。
防衛は個人でSNSで拡散させるしかないか・・・しかし対応は官僚のさじ加減次第とは・・・
頑張ってこの業界の恥部を曝した上で改善できる事を希望します。
コメントありがとうございます。
確かにそういうことはあるのかもしれませんね(私の所属している事務所はコネなどを使わない、ガチンコ系の事務所なのでそういった内部事情には疎いですが、、)
建築業界に疎遠な物件のオーナーや入居者の方にもわかりやすい、なるべく率直な記事を提供できればと考えています。近々、続編記事を公開予定です。