今年9月に発売された書籍『コンピュテーショナル・モデリング 入門から応用 Grasshopper × スクリプトで極めるアルゴリズミック・デザイン』の紹介をしています。
Grasshopperの新たな名作本『コンピュテーショナル・モデリング 入門から応用 Grasshopper × スクリプトで極めるアルゴリズミック・デザイン』が今年9月に発売されました。 タイトルが長い。
著者は、アプリクラフト中嶋氏+髙木事務所、髙木氏の共著。
この本『コンピュテーショナル・モデリング 入門から応用 Grasshopper × スクリプトで極めるアルゴリズミック・デザイン』は、中島淳雄氏と髙木秀太氏の共著となっています。
中嶋氏は、Rhinocerosの日本代理店アプリクラフトの代表をされてる方ですね。ライノど真ん中の方と言えると思います。
髙木氏は、建築テック系の事務所を主宰されてる、ガチ実務の方です。
私も今年に入って何度かお会いする機会がありましたが、独立系建築テック系としては頭一つ出ている存在ではないでしょうか。普段はゼネコンや建築家と協働してグラスホッパーやpythonなどを使ってデジタル的な側面からの設計支援を事務所としてされているようです。
本書の前半のグラスホッパーでの操作部分を中嶋氏が、後半のPython部分を髙木氏が、執筆されています。
内容は、中級〜上級者向け。
本書の内容は、先で触れたとおり、主に前半のグラスホッパーでの操作、後半がPythonとなっています。
それ以外にも、カンガルー、ガラパゴスなどの必須プラグイン、機能についてもしっかり解説があります。
本書ですが、数あるライノ・GH本の中でどういう位置づけになっているのでしょう。
実は、ライノの正規代理店アプリクラフト社のサイトにライノ・GH本レベルマップという便利な図が掲載されています。
以下、小さい画像で引用させていただきます。
(大きな画像はリンク元でご覧ください。)
縦軸に注目すると、下がBasic、上に行くにしたがってAdvanced、となっており(このマップはすごく便利です。)、
本書が最も上級者向けになっていることがわかると思います。
実際中身を見てみても例えばかなりボリュームのある書籍「Parametric Design with Grasshopper 増補改訂版 建築/プロダクトのための、Grasshopperクックブック」と比べてみても、断然文字数が多いです。
前半では、GHでの形態操作と合わせて、形態(ナーブスの扱い)についての深い理解を促すような内容になっていて、中嶋氏の強い考えが読み取れます。
後半は個人的に今興味のあるPythonなどの解説に当てられています。この辺りは、そもそもPythonとは、というところからしっかりと説明があります。
本のタイトルに「入門から」とありますが、現状のGHの普及具合や上記マップ分布を見ても本書は完全に中級以上向け(〜上級者)としておすすめできる内容となっています。(笑)
とはいえかなり充実した内容となっていることは間違いないので、今後確実にGHを使っていくという方は、以下の入門〜中級向け書籍との合わせ買いもおすすめです。
入門書
Rhinoceros+Grasshopper 建築デザイン実践ハンドブック (建築文化シナジー)
中級者向け
Parametric Design with Grasshopper 増補改訂版 建築/プロダクトのための、Grasshopperクックブック
サンプルが充実。非常に丁寧。これだけでも価値がある。
また、本書籍の魅力として、サンプルが充実しているということも挙げられます。
実は以前、髙木さんがスピーカーをされてたセミナーに参加したことがあり、その時驚いたのがサンプルファイルの綺麗さです。
非常に分かりやすく整理されていて、理解しやすかったのです。
今回の書籍のサンプルファイルもご多分にもれず、非常に見やすく整理されており、かつ豊富に取り揃えられています。
他の人が作ったファイルと言うのは、それを見るだけでかなり勉強になるのでそれが豊富に用意されてるのは嬉しいですね。
専用サイトでは動画も閲覧できます。
サンプルは、Rhino6対応です。
サンプルを見ていて気づいたのは、書籍の入りが文字が多くてとっつきにくく感じた場合は、まずひととおりサンプルファイルを見て、気になったところを書籍で深読みしていくという逆引きとしても使えて、これがかなり便利です。
建築エンジニアという職能。
この本、実際誰が見るのか、という話をしようと思います。
以下のような人たちには役立つのではないでしょうか。
- GHをガッツリやりたい建築学生
- GHでガッツリ設計をしたい設計者
- 「建築エンジニア」の卵
ざっと、上の3種類の人たちが考えられます。
「GHをガッツリやりたい建築学生」
在学中にGHをやり始めてもっと極めたくなった人たちです。時間があるのでやりこめるでしょう。将来的なルートとしては設計事務所に行くか、テック系スタートアップを立ち上げるか、組織内の建築デジタル系エンジニアになるのもありかと思います。
「GHでガッツリ設計をしたい設計者」
設計者の業務は一般的に法規チェック、施主打合せ、スケジュール管理など多岐にわたり、それらにプラスしてグラスホッパーをやるとさらに大変になるかもしれませんが、使えると効率化もできるし、デザインが今までと変わる気がするのでがんばれます。
一般的にはまだまだ珍しい存在です。
「建築エンジニア」の卵
設計ではなく、そういう道筋を立てるのが好きだという人は、GHやpythonが扱える「建築エンジニア」、「建築デジタル系エンジニア」として、今後需要が高まっていくのではないでしょうか。イメージ的にはITエンジニアの建築版のような感じです。
本書はそういう人たちを目指すもしくはなりかけている、「建築エンジニア」の卵の有力な助けになると思います。
建築業界は古い業界なのでそうすぐには変わらないでしょうが、建築を情報として軽快に扱える人材がデザインのみならず法規や施工も含めて今後増えていく必要があると個人的には思ってますので、このサイトでも建築エンジニアの方々に向けて何かやれたらなと少し計画しています。
話がそれましたが、 『コンピュテーショナル・モデリング 入門から応用 Grasshopper × スクリプトで極めるアルゴリズミック・デザイン』 はGH関連書籍ラインナップに新たに追加された物量のある書籍です。
ぜひ、お正月休みのお供にいかがでしょうか。
手元に置いておいて損はないかと思います。
コンピュテーショナル・モデリング 入門から応用 Grasshopper × スクリプトで極めるアルゴリズミック・デザイン
[star rate=”4.5″]
コメントを残す