UE5の技術的なベンチマークを確認するのに最適な「City Sample」プロジェクト
Unreal Engine 5をインストールしてどこまでのことができるのか?ということを確認したいときに、良いサンプルがありました。
マーケットプレイスにて無料で配布されている、「Cityサンプル」というサンプルプロジェクトです。
これは映画Matrix Resurrections公開と同時期ぐらいにUE5のテクニカルなデモとして公開されたゲーム風のソフト「The Matrix Awakens」の元データ的なものだと思います。
UE5の技術的なベンチマークを体感・確認するのに最適なプロジェクトの一つです。
プロジェクトの起動方法
Launcherマーケットプレイスから無料でダウンロードできます。(90GBくらい!あります)
「Cityサンプル」を選択。
The Matrix Awakens: An Unreal Engine 5 Experience の都市シーンが Unreal Engine 5 をどのように使用して制作されたかを見ることができるダウンロード可能なプロジェクトです。
Cityサンプル – マーケットプレイス
大容量90GBですッ。。。ダウンロードはHDDとかに保存した方がいいかもですね。
おすすめのデータ保存設定は以下の記事にて書いています。
UE5のインストール先・保存先を考える。SSDかHDDか。【Unreal Engine 5.0.3】
「マイダウンロード」よりCityサンプル上の「プロジェクトを作成する」をクリックして、インストールをしばらく待つと、「マイプロジェクト」上にプロジェクトが作成されると思います。
そのプロジェクトをクリックし起動してみます。
「Cityサンプル」を実際に動かしてみた。
プロジェクトの起動~実際に動かしてみた動画はこちらです。
キャプチャ紹介
見どころをキャプチャでも紹介します。
「City Sample」起動画面です。
プロジェクトの説明が書いてあります。
推奨スペックは
- 12-Core CPU @3.4 Ghz
- 64GB RAM
- GeForce RTX 2080 or AMD Radeon 6000 以上
- 少なくとも8GBのVRAM
とあります。
今の私のPCはRAM以外クリアしている(RAMは32GB、増設予定)なので、まあ行けるでしょう。
一つのレベルを開いてみましょう。
「コンテンツ」>「Map」>「Big_City_LVL」レベルを選択します。
動画を見てもらえるとわかると思いますが、これがメインのレベルのようです。古びたニューヨーク?っぽい街角からスタートです。
このナイオビ風の人が主人公のようです。
車もぎりぎりで止まってくれます。
空を飛ぶこともできます。
街並みがすごく無機質でかっこいいです。
一番上まで行くとこんな感じです。
手前半分の川の範囲内がプレイヤーが活動できる範囲内で、すべての道路で人や自動車がプロシージャルに自律的に動いています。
HoudiniとかUnrealとか最近のソフトがすごいので技術的にはやれそうですが、本当にできるんですね。。。
UE5のMassAI(MassEntity)という機能で実現しているそうです。
車がプログラムされた道順を動きつつ、周りの状況にも対応するので、手前で事故を起こしてハイウェイで渋滞を起こしたりできます。
車にも乗れます。ポルシェ風の車や、MATRIX Reloadedに出てきたようなキャデラック風、ダッジ風の車もあります。それぞれの自動車のタイプによってスピードの出やすさやトルク感、ブレーキの利き具合が違います。
私のPCのデモ環境では、突然道路のコリジョンがなくなることがよくありました。
(理由は不明ですが、WorldPertitionの切り替えの箇所で起きているのかもしれません。)
衝突した際の破壊の表現も、ものすごくリアルです。
「Cityサンプル」プロジェクトの中身を確認
ここからは、「Cityサンプル」のプロジェクトの中身を少し見ていきます。
UE5で採用された様々な技術が使われています。(すべてはわからないですが、、)
World Pertition
操作画面の右下に見えている地図のようなものが、WorldPertitionです。広大なオープンワールドを作業可能なサイズに分割し、かつプレイ時には自動読み込みしてくれるような機能のようです。
実際に作業時とプレイモードで比べてみたのが以下です。
作業ごとのレベルの分かれ目(パーティション)がよく分かります。
Lumen
これは動的なグローバルイルミネーションの機能です。
たとえばゲーム業界では天井が突然破壊され、穴が開いて天光が入り光の環境が変わるようなとき、これまでは複数の光の情報を周辺マテリアルにベイクして切り替えていたそうなのですが、そういうことをしなくてよくなるそうです。(建築のプレゼンには「破壊」はなじみのない表現ですが、、)
今回のサンプルでは、明るいところから暗いところに入ったら目が慣れるかのように徐々に周りが見えるようになる、という感じで確認できます。
微妙にですが、暗いところに目を向けた時と、明るいところに目を向けた時で、暗い方の暗さが異なります。
MetaAI (MetaEntity)
自律的に動く群衆や交通の機能。今回の動くものすべてに使われてそうですね。道路で事故を起こしたりすると全員がこちらをじっと見てくる気がして、結構不気味です。
Rule Processor
プロシージャルに建物などを配置する機能のようです。
別のレベルにビルの原型のようなものがありました。
おそらくこれらの要素をベースにプロシージャルに街並みが作り上げられています。
詳しいワークフローはわかりませんが、Houdiniでプロシージャルに制作した建物群をこのRuleProcessorで自動配置しているようです。
アウトライナーを確認すると都市のオブジェクトが大量の「HoudiniAssetActor…」というフォルダに格納されていることが分かります。
Nanite
個人的には死ぬほど読みにくいこの機能(ナナイト)ですが、巨大かつ大量のハイディテールなオブジェクトを負荷を気にせず(Low-Poly化する必要なく)配置することができる機能ということです。
これも建築業界では基本的には多少PCが重くても気合で乗り切ろうとすると思いますが、ゲーム業界では、これまでは、異なるLODのモデルを複数用意し、視点に合わせてモデルを切り替えていたといいますから、この機能の影響はすごそうです。
なおこの機能は今のところ、プレイするPCのスペックが必要とされたり、樹木や半透明のオブジェクトではなく、岩や建物などの不透明でソリッドなオブジェクトを得意としているというような制限があるそうです。
表示モードを「Naniteビジュアリゼーション」にすることで確認できます。
Niagara
UE5ではすでに使えますが、ベータもしくはアルファ版のパーティクルシステムです。
今回のプロジェクトではどこに使用されているかわかりませんでしたが、広範囲に使用されているそうです。
この落ちかけた海とかに使用されているのかもしれません。
Chaos
「Chaos Destruction (ケイオス破壊) システムは、シネマ クオリティの破壊をリアルタイムで実現する Unreal Engine 4 (UE4) のツールのコレクション」とのことです。
今回だと自動車の衝突時の破壊表現に使われていると思われます。
その他の特徴的機能
- Temporal Super Resolution (TSR):高解像度用のアンチエイリアスの機能のようです。
- MetaSounds:プロシージャルに環境音を発生させられる機能。
- MetaHumans:超絶リアルな次世代のデジタルヒューマン機能。
以上、すでに公開されておそらく10か月近く経っている「Cityサンプル」ですが、UE5を始めるにあたって実際に見てみました。
これが無料で動かせるのはものすごいですよね。多少PCのスペックが必要ですが、皆様もぜひ試してみてください。
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